文:浜 なつ子
絵:よこやま ようへい
むかし、むかしの ことです。 うらしまたろう と いう りょうしが いました。
まいにち、うみで さかなを つります。
ところが、その ひは いつまで たっても つれません。
「あぁ、どうして つれないんだろう」 うらしまたろうが つぶやくと、あれっ? なにかが つれました。
ちからいっぱい、ひきあげると、それは おおきな かめでした。
うらしまたろうは かめを にがして やる ことに しました。
「かめさんよ。うみに もどって しあわせに くらすんだよ」
その ひ、さかなは いっぴきも つれません でした。
すると、「うらしまさん、うらしまさん」と いう こえが しました。
あの おおきな かめでした。
「わたしは りゅうぐうの おとひめさまの つかいです。あなたを りゅうぐうへ つれて いって あげましょう。 さぁ、わたしに のって ください」
うらしまたろうが かめの せなかに のると、かめは ずんずん うみの なかに もぐって いきました。
やがて、きらきら ひかる りゅうぐうが みえて きました。
たくさんの さかなたちが おどって います。
「ほら、たいも ひらめも あなたを むかえて よろこんで います」
かめは うらしまたろうを りゅうぐうの なかに つれて いきました。
みた ことも ない かわいらしい おとひめさまが うらしまたろうを むかえて くれました。
「うらしまたろうさま、かめを たすけて くれて ありがとう ございます。ここが あなたの うちだと おもって くださいね」
うらしまたろうは おとひめさまと まいにち、たのしく くらしました。
そうして さんねんが すぎた ある ひの ことです。
うらしまたろうは、ふっと おかあさんの ことを おもいだしました。
すると、すぐにでも いえに かえりたく なりました。
おとひめさまは きれいな はこを もって きて いいました。
「これは、たまてばこ です」 「たまてばこ?」
「はい、あなたさまが ここへ また もどって きたいと おもうのなら、 けっして この はこを あけては いけません」
かめの せなかに のって かえって きた うらしまたろうは びっくりして しまいました。
うらしまたろうの いえが なくなって いたのです。
ちょうど やって きた おばあさんに、「うらしまたろうの いえは どこですか?」 と ききました。
おばあさんは かんがえてから いいました。
「むかし うらしまたろうと いう ひとが、うみから かえって こなかったと いう はなしを きいた ことが あります。でも、さんびゃくねんも むかしの はなしですよ」
「ええっ! さんびゃくねん?」 うらしまたろうは おどろいて、どうして いいのか わからなく なりました。
「そうだ、この はこが ある」 うらしまたろうは たまてばこを そっと あけました。
すると、なかから しろい くもが もくもくと でて きました。
うらしまたろうは かみのけも まゆも まっしろな おじいさんに なって しまいました。
おくづけ
「うらしまたろう」日本語
文:浜 なつ子
絵:よこやま ようへい
朗読:服田美知代
音楽:秋山裕和
企画:にほんごの会くれよん
制作:多言語絵本の会RAINBOW
この作品は、販売、改作、改変できません。