文:浜 なつ子
絵:よこやま ようへい
むかし、むかしの ことです。おじいさんが、やまへ たけを とりに いきました。
「おや、いっぽんだけ ひかって いる たけが あるぞ。ちょっと きって みよう。どれ、どっこらしょ」
「おや おや、ちいさな おんなの こが いるぞ。よしっ、わしと ばあさんで そだてて あげよう」
おじいさんは、その こを そっと てのひらに つつんで、いえに かえりました。
「まあ、なんて ちいさくて かわいい おんなの こだ こと。おじいさん、なまえは どう しましょうか」 「かぐやひめに しよう」
かぐやひめが きてから、おじいさんの いえでは ふしぎな ことが おこりました。
おじいさんが とった たけから、かならず おかねが でて きたのです。
おじいさんたちは、たちまち おかねもちに なりました。
やがて、かぐやひめは、みるみる おおきく なりました。
うつくしい ひめが いる。かぐやひめの うわさは、くに じゅうに ひろまりました。
たくさんの ひとが けっこんを もうしこみに きました。しかし、かぐやひめは みんな ことわって しまいました。
さんねんが たった ころです。
「かぐやひめや、なぜ つきを みて なくのだい」
「わたしたちの たいせつな かぐやひめ、なにが かなしいのですか」
とうとう かぐやひめは いいました。
「わたしは にんげんの せかいの ひとでは ありません。つきの せかいの ひとです。まんげつの ひに つきに かえらないと いけないのです」
「かぐやひめや、いったい なにを いって いるのだい」
「わたしも おじいさんと おばあさんの そばに もっと いたいのです。つきの おうさまに、もっと ここに いさせて くださいと おねがい したのですが、ゆるされません でした」
かぐやひめは、おじいさんと おばあさんに、もう にどと あえなくなる ことが かなしくて ないて いたのです。
とうとう まんげつの ひに なりました。
かぐやひめの いえの まわりは、つきの おうさまから ひめを まもる ために、おおぜいの さむらいが まちかまえて います。
よるの じゅうにじ でした。いえの まわりが きゅうに かがやきました。つきの せかいの ひとが、なんにんも くもに のって おりて きたのです。
それに むけて さむらいたちは、ゆみを かまえるのですが、ちからが はいらずに うてません。
「おじいさん、おばあさん、いままで ありがとう ございました。これから としを とって いく おふたりの おせわが できず、ごめんなさい」
つきの せかいの ひとが、あまの はごろもを かぐやひめに きせました。
すると、かぐやひめの なかから、にんげんの よろこびや かなしみなどの きもちが きえて しまいました。
かぐやひめは、つきの せかいの ひとに もどったのです。そして つきの せかいの ひとたちと いっしょに、そら たかく のぼって いって しまいました。
おくづけ
「かぐやひめ」日本語
文:浜 なつ子
絵:よこやま ようへい
朗読:服田美知代
音楽:秋山裕和
企画:にほんごの会くれよん
制作:多言語絵本の会RAINBOW
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