うらしまたろう

文(ぶん):浜(はま)  なつ子(こ)  
絵(え):よこやま ようへい

2

むかし、むかしの ことです。 うらしまたろう と いう りょうしが いました。
まいにち、うみで さかなを つります。

3

ところが、その ひは いつまで たっても つれません。
「あぁ、どうして つれないんだろう」 うらしまたろうが つぶやくと、あれっ? なにかが つれました。

4

ちからいっぱい、ひきあげると、それは おおきな かめ でした。
うらしまたろうは かめを にがして やることに しました。
「かめさんよ。うみに もどって しあわせに くらすんだよ」

5

その ひ、さかなは いっぴきも つれませんでした。
すると、「うらしまさん、うらしまさん」と いう こえが しました。
あの おおきな かめ でした。

6

「わたしは りゅうぐうの おとひめさまの つかいです。あなたを りゅうぐうへ つれて いって あげましょう。 さぁ、わたしに のって ください」

7

うらしまたろうが かめの せなかに のると、かめは ずんずん うみの なかに もぐって いきました。
やがて、きらきら ひかる りゅうぐうが みえて きました。

8

たくさんの さかなたちが おどって います。
「ほら、たいも ひらめも あなたを むかえて よろこんで います」
かめは うらしまたろうを りゅうぐうの なかに つれて いきました。

9

みたこともない かわいらしい おとひめさまが うらしまたろうを むかえて くれました。
「うらしまたろうさま、かめを たすけて くれて ありがとうございます。ここが あなたの うちだと おもって くださいね」
うらしまたろうは おとひめさまと まいにち、たのしく くらしました。

10

そうして さんねんが すぎた ある ひの こと です。
うらしまたろうは、ふっと おかあさんの ことを おもいだしました。
すると、すぐにでも いえに かえりたく なりました。

11

おとひめさまは きれいな はこを もってきて いいました。
「これは、たまてばこ です」 「たまてばこ?」
「はい、あなたさまが ここへ また もどって きたいと おもうのなら、 けっして この はこを あけては いけません」

12

かめの せなかに のって かえってきた うらしまたろうは びっくりして しまいました。
うらしまたろうの いえが なくなって いたのです。

13

ちょうど やってきた おばあさんに、「うらしまたろうの いえは どこですか?」 と ききました。
おばあさんは かんがえてから いいました。

14

「むかし うらしまたろう という ひとが、うみから かえって こなかった という はなしを きいた ことが あります。でも、さんびゃくねんも むかしの はなしですよ」
「ええっ! さんびゃくねん?」 うらしまたろうは おどろいて、どうして いいのか わからなくなりました。

15

「そうだ、この はこが ある」 うらしまたろうは たまてばこを そっと あけました。
すると、なかから しろい くもが もくもくと でて きました。

16

うらしまたろうは かみのけも まゆも まっしろな おじいさんに なって しまいました。

17

おくづけ
「うらしまたろう」日(に)本(ほん)語(ご)
文(ぶん):浜(はま) なつ子(こ)
絵(え):よこやま ようへい
朗(ろう)読(どく):服(はつ)田(た)美(み)知(ち)代(よ)
音楽(おんがく):秋(あき)山(やま)裕和(ひろかず)
企(き)画(かく):にほんごの会(かい)くれよん 
制(せい)作(さく):多(た)言(げん)語(ご)絵(え)本(ほん)の会(かい)RAINBOW

18

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