エビの 腰が 曲がった わけ(日本の昔話)
みなさん、エビの 腰は 曲がって いますよね?
でも 昔は まっすぐ だったんですって。
どうして 曲がっちゃったのかな?
今から そのわけを お話しますね。
むかし むかし あるところに とても大きな カエルが いました。
「ゲコッ ゲコッ どけ どけ チビども! ゲコッ ゲコッ」
カエルは とても いばって いました。
「ゲコッ ゲコッ 俺さまは この世で いちばん でかいゲコ。
そして 強いゲコ。 そうだ 伊勢まいりに 行こうゲコ。」
カエルは 伊勢まいりに 出かけました。
びよーん べたん びよーん べたん
どんどん 行くと やがて 広くて まっすぐな 道に 出ました。
「なんて りっぱな 道だゲコ。 よし この道を 行こうゲコ」
びよーん べたん びよーん べたん
ところが とつぜん どこからか 大きな 声が しました。
「アタシの 背中に いるのは だぁれ~」
「うひゃぁ~」
なんと 道かと 思ったのは 大きな 大きな ヘビの 背中でした。
「だぁれ? あなたは?」
カエルは ぶるぶる ふるえながら 答えました。
「わ、わ わたしは この世で いちばん 大きな カエルですゲコ」
「ほっほっほ…この世で いちばん 大きな カエル ですって?
この世で いちばんの ちびガエルが⁈」
「あなたさまの おっしゃる 通りですゲコ。 どうか わたしを 食べないで くださいゲコ」
「あなたなんか 小さすぎて お腹の足しにも ならないわ。 さっさと お行き」
カエルは すたこら さっさと 逃げ出しました。
「うっふっふ… アタシは この世で いちばん 大きな 生き物よ。
だって 自分で 自分の 尻尾も 見えない くらいですもの…。
それに 強いわ。 そうよ、伊勢まいりに 行くと しましょう」
ヘビも 伊勢まいりに 出かけました。
にょろ にょろ にょろにょろにょろ
にょろ にょろ にょろにょろにょろ
ところが とつぜん…
空が 真っ暗に なり
風が びゅうびゅう ふきはじめました。
「あれ~! 嵐よ~ 飛ばされるわ~」
ところが それは 嵐では なくて
大きな 大きな ワシの 羽ばたきでした。
「きゃぁ~」
「なんじゃぁ? おまえは?」
「アタシは この世で いちばん 大きな ヘビよ!」
「はっはっは! この世で いちばん 大きな ヘビだと?
この世で いちばんの ちびヘビが?!」
ヘビは くやしがりましたが 仕方が ありません。
すごすごと 逃げだしました。
「はっはっは。 オレは この世で いちばん でかい 生き物だ。
なんせ オレが ちょっと 羽ばたけば 嵐が 起きる くらいだからなぁ!
そして 強い! そうだ、伊勢まいりに 行くとしよう」
ワシも 伊勢まいりに 出かけました。
ばさっ ばさっ ばさっ ばさっ・・・
広い 広い 海の 上を 飛んで いると、
海の中に 柱の ようなものが 見えました。
「これは いい! ちょっと この上で ひと休み」
ところが とつぜん どこからか 声が しました。
「ボクの ひげの さきに いるのは だ~れ!」
「うわぁ~」
なんと 柱だと 思ったのは、大きな 大きな エビの ひげでした。
「君は だれ?」
「オレは この世で いちばん 大きな ワシだ」
「あっはっは! この世で いちばん 大きな ワシだって?
この世で いちばん 小さな 君が?」
エビは ひげを ふるわせて 笑いました。
そのはずみで、ワシは どこかに 飛ばされて しまいました。
「あっはっは。 ボクは この世で いちばん 大きな 生き物さ!
そして 強い! そうだ、伊勢まいりに 行こうっと!」
エビも 伊勢まいりに 出かけました。
びちっ びちっ びちっびちっびちっ
びちっ びちっ びちっびちっびちっ
どんどん 歩いて 行くうちに、日が 暮れました。
「ふぅ~ くたびれた~」
エビは ちょうどいい 穴を 見つけると、その中に もぐりこみました。
「今夜は ここで、寝ようっと」
そして ぐっすり 眠って しまいました。
さて、朝に なりました。
とつぜん、穴の下から 音が 響いて きました。
ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ザッバーン
とつぜん 穴から 水が ふきだして、エビを 空へと 吹き飛ばしました。
「ひぇぇぇぇぇ~」
なんと その穴は くじらの 頭の穴でした。
エビは どんどん どんどん とばされて…
落ちた ところは 岩の上。
ドッスーン!
「いたたたたたたた…」
ひどく 腰を 打って しまいました。
それからと いう もの、エビの 腰は 曲がって しまったんですって。
奥付
「エビの腰が曲がったわけ」(日本の昔話)
文・絵・朗読:片桐早織
音楽:秋山裕和
制作:多言語絵本の会RAINBOW
この作品は、販売、改作、改変できません。